幼児の記憶力

言語レッスンの一環として、自己紹介とともに復唱のレッスンを行っています。
「土屋先生は日曜日に買い物に行きました。本屋さんで”一寸法師”の本を買い、文房具屋さんで青のペンを買い・・・・○○をして帰りました」


など、毎週文章を変え単語を覚えさせること、文章化させることにより時系列的に記憶させることを目的とします。
2次的には、表現力育成や復唱から発展させ、想像力育成に結び付ける問いかけなどを行っています。

不思議なもので3週前の文章でも子供たちは記憶しています。

大人の我々が、最も幼いときの記憶を辿ろうとすると、たいていは幼少期まで遡ります。しかし、細部にわたって思い起こそうとすると中々思い出せなかったりします。

ですが、幼児期の記憶中枢は目まぐるしいものがあります。

2歳児になれば昨日あった出来事についてお話してくれるようです。
全て、言葉で説明はできないとしても、特定の時間に特定の場所であった出来事を記憶し、思い起こすことができる。「エピソード記憶」と言います。


3歳を過ぎると、体験した出来事を順序立てて話ができるようになります。

たとえば、「マクドナルドに行ったときのことをお話して」と求めると、
3歳児でもマクドナルドでの個々の出来事の記憶(エピソード記憶)をもとに、時間の流れに沿って、まず食べるものを注文して、先にお金を払ってから受け取って・・・・
というように適切な順序でストーリーに組み立てて話をすることができます。
典型的な行為の流れをスクリプトといいます。
スクリプトが形成された記憶をイベント記憶といいます。

体験した出来事のスクリプトが形成させるには、
“ことば”が重要な役割を担います。

面白い研究結果があります。
4歳児から6歳児を対象に、家族で旅行をした体験を6か月後、18か月後に思い起こしてもらったところ、旅行の後、そのことについて家族の会話が多かったほど、18か月後もよく思い起こすことができたようです。

ちなみに、家族で会話をする体験をすると、4歳児も6歳児と同じように思い起こすことができたようです。
ことばで表現しあうことがスクリプトの形成を助け、情報を記憶に長く留めさせ、思い起こすことを助けるようです。

最近はテレビなど、情報源が多彩なため、語尾を曖昧なままに会話が成立させてしまったり、
お忙しい家庭では、〜ながら会話などが目立ちます。
その影響は、子供たちの記憶力に関わってくることはおわかりかと思います。